設計デザイナー・建築家と一緒に作るメリット。
計画を立てる
これは多くの人にとって人生で最大の買い物ということはよく言われていますが、それに比べて「気をつけるポイント」や「大事なこと」は見落とされがちです。
そこにはそれなりの理由があります。
これは家自体の金額が大きいため、扱う事業者も「売る」ことが最優先になってしまっている現実です。
一般的に大手ハウスメーカーの粗利益率は40%程度と言われています。中小のハウスメーカーさんも30〜40%程度と言われています。ですから1棟売れ残っただけでも損失は大きく、どうしても売り主体で動かざる負えない部分があります。(利益率の是非はそれぞれのお考えにお任せ致します)
そこでここでは家を作るうえで「気をつけるポイント」や「大事なこと」を中心に進めて行きたいと思います。この拙い文章が家を作ることをお考えの方に少しでもお役に立てればそれで十分です。
大まかな計画を立てる
「さて、そろそろと子供も増えたし、家の購入を考えなきゃ」と考え始めるタイミングは人それぞれですが、新しい住処を探すにあたってやるべきことがいくつかあります。順を追って説明して行きます。
まず最初にすることは計画を立てることです。
計画と一口に言ってもいろいろあります。「ライフプラン」「資金計画」を数値やお金を基本としたものや、「理想の暮らし」「生活に求めるもの」などの形にできづらいものがあります。
みなさん「こんな暮らしがしたい」「こんな家に住みたい」といった想像などは得意だと思います。それこそ、資金の有る無しにかかわらず「大きいリビングから見える夕日を眺めながら一杯やりたい」なんて想像を私もしてしまいます。
そういった計画を曖昧でも良いので、理想などを含めてメモに書いていくと良いです。それが後に振り帰った時にきっと役に立ちます。
「理想の暮らし」「生活に求めるもの」
大事なのはそこから「譲れないもの」を絞っていくことです。例えば、先ほどの私の妄想ですが、譲れないものは何かと紐解いていくと、「一杯の酒はシャンパン」ではなく、「大きなリビング」でもありません。そこで求めているのは「リラックスできる空間」とそれを許す「家庭環境」です。
「リラックスできる空間」とは、人それぞれ感覚が違いますのでこれだと言い切ることが難しいですが、一般的には、「雑然としていない」「キチッと整理されている」「見通しが良い空間」などがあてはまります。これはどちらかというとインテリアの部分と重なってきますが、設計段階までにある程度考えておきたいのは、ダイニングテーブルやソファを置くスペースの確保(リビングダイニングのスペース)、整理整頓できる収納の確保、統一された色使い、適度な照度、風通しの良さ、遠くを見渡せる空間といったことです。こういったことをさらに優先順位ごとに並べていきます。
そうすることで、より具体的にリラックスできる空間というものが解明されていきます。
「家庭環境」ですが、これはそれぞれの生活に対する考え方がありますので深くは語れませんが、改善していくことは可能です。
例えば「奥様の機嫌」です。普段料理をすることが多いと思いますが、キッチンは整頓され機能的でないとそれだけで相当なストレスになります。家事動線を能動的に考え、ダイニングやパントリースペースを有効的にゾーニングしていきます。玄関を入ったらそのままパントリースペースに入れ、その奥にはキッチンが並んでいるといったことです。細かく具体的でなくても良いので、「こんな感じになればいいな」といったレベルで構いません。こういったことを考えて実現したなら、奥様の仕事は随分と楽になり、機嫌の改善に少しは役に立つのではないでしょうか。
こういったことをしっかり紐解いていくと、「譲れないもの」が明確になってきます。上記の例で言えば、「見通しが良い空間」と「ラクな家事動線」になってきます。
資金計画
先ほど言いました理想の暮らしを、今度は現実に落とし込む作業です。
大きな買い物ですから妥協はしたくないですが、現実問題として限りがあります。まずはご自身の置かれた状況を具体的にしましょう。
まず土地です。
購入の必要があるのか、それとも取得済みなのか。
今後、相続の可能性があるのか。
また広さはどの程度の広さが必要なのか。そういったことを一覧にしてまとめることをお勧めします。
次に建築費用です。確保済みなのか、融資で考えているのか。
よく犯しがちな間違いで代表的なものが、土地購入費用と建築費用のバランスです。
土地の価格はアットホームなどのWEBサイト開けば簡単に調べられます。住みたい地域の相場情報までしっかり出てきます。
問題なのは建築費用の相場を勘違いしている点です。そもそも具体的にこれだけ必要と言える人は、世界中探してもおそらく一人もいません。
なぜなら、どんな家に住みたいか、どんな暮らしをしたいかが分からないのに、だいたいこのくらいと言えるわけがないのです。
失敗した人の典型的な例は、土地を購入する際に不動産会社から相場を聞いたというのが良くあります。申し訳ないですが、ハッキリ言ってしまえば聞く相手を間違ってしまったのです。彼らは土地取り引きのプロであって建築のプロではありません。日常の業務として簡単なリフォームや原状回復の相場は知っていますが、家を一から作ることで知っているのは建売り住宅を作るときの相場だけです。おそらく坪単価50〜60万円程度と言われた方が多いと思います。土地の広さにもよりますが、自分の理想の暮らしを叶える注文住宅を作ろうと思うと、この金額ではいまの時代かなり厳しいものになるでしょう。そして多くの方が資金は十分あったはずなのに、やむなく諦めざるをえない状態になってしまったのです。
なぜこのような失敗が起こるかというと、そもそもスタートの順番が間違っているからです。
例えば、簡単に進め方の順番を書きますと以下のようになります。
一番最初に融資やライフプランの相談として、銀行や保険会社などに行くのは間違っていません。
問題は次です。土地を買うのに不動産会社だけで決めてはいけません。ご自身が土地や建築のプロなら問題ないですが、ほとんどの方はそうではないと思います。
土地を購入する根拠は価格だけで良いのですか。相場より安いから良いのですか。
この時点ですでに、本来の目的である「理想の暮らし」を忘れてしまっているのです。優先事項は「理想の暮らし」でしょうか。それとも「資産価値」でしょうか。ここは声を大にして言いたいです!
理想の暮らしを叶えたいなら、2番目に相談するのは「設計デザイナー」「建築家」です。彼らなら購入予定の土地に対して、ボリュームや建築可能な家の形、土地自体の問題もしっかりアドバイスしてくれます。土地探しは不動産会社で探して、現地調査に設計デザイナーも同行してもらうのが最善の方法です。それに建築費用の相場観もある程度は相談可能です。
工事見積もりも大抵は2〜3社から取り、工事品質も含めて選択していきます。場合によっては費用も抑えられた事例もあります。
最後に諸経費です。
引っ越しなどの費用はもちろんですが、税金や各種取引税や司法書士などの費用もあります。
このあたりは銀行や税理士が詳しいので、相談するのがベストです。
また資金計画の部分は別の機会にしっかりと書かせて頂きます。
ライフプラン
わりとこの部分を忘れがちな方が多いようです。子供は何歳で、何才まで働けて、ローンはこのくらいなら無理なく返済できそうなどといった将来設計です。
こういった作業は本来FP(ファイナンシャルプランナー)が得意とするところです。
身近にいなければ保険を取り扱う方もできるはずです。ライフプランを設計することで、暮らしたい生活の理想と現実が重なってより理解が進みます。
最近でいうと、コロナウイルスの影響で失業したり賞与が大幅カットになったりと、予想しなかった事が起きています。東日本大震災やリーマンショックもそうでしたが、10年に1度は大規模な出来事が起きています。こういった事が起きても日々の生活が問題なく送れるように、一度、ライフプランの設計をするべきです。実際、生活がままならなくなり泣く泣く家を手放したなんて話はよくあるのです。
実際のライフプランの設計では、自分の収入と配偶者の収入、子供の数と年齢、子供の教育方針、住宅ローンの残高と返済プラン、老後の収入と年金額といった情報で組み立てていきます。
焦らないことが大事
家を作ろうと考え始めると、アレもしたいコレもしたいと楽しくなってきます。それはそれで良いのですが、その思いや考えが一時的なものなのか、ずっと思い続けてきたことなのかで随分と違う結果になります。
住宅展示場などを見学し、あれこれ批評するのも良いですし、インスタグラムなどで過去に建築された画像を探すのも良いかも知れません。その過程の中で理想の暮らしを育ててください。わざわざ「家を作る」という選択をするのならば「目的」が大事になります。
大きな買い物です。じっくりと目的を見つけてください。
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