八代 国彦 インタビュー

自然と向き合い自然素材を最大限に生かす家作りを目指します。

一級建築士事務所やしろ設計室 代表 八代 国彦

設計を仕事にするきっかけは?


日大の理工学部建築学科を卒業して、山下設計に入社しました。
病院や老人保険施設などの福祉施設をはじめ、オフィスビル、コンベンションセンターや銀行など、割と大きな建物の設計が中心ですが色々作りましたね。
その後は、父親が、設計事務所というか、代願事務所みたいなものを経営しており、そこで6年ほど働きました。主に大工さんの代わりに、確認申請を出したりするのが仕事でした。
当時は、大工さんの下請けという立場で仕事をしていたので、図面を書くには書くのですが、現場で勝手に大工さんが思った通りに作ってしまう。そういったクレームがちらほら出始めていた時代でもありました。その辺りから、この仕事を続けていく危機を感じてきました。それで設計者としての仕事をしっかりしようと考え、市川にある加藤武志さんの事務所に弟子入りしました。6年半くらい在籍している間、主に住宅ですが、一軒一軒とても丁寧にしっかりと家づくりをするということを経験しました。
若い頃は、いろいろなことを吸収するためもあって組織事務所を選びましたが、将来的には、事務所の仕事とは対極にある、小さな建物や住宅を手がけたいと思っていました。






独立して最初の仕事は、人づてに知り合った年配の住宅をご依頼頂きました。
しかし営業は大変ですね。というか、営業ってどうやったら良いんですか?(笑)一件の仕事があるとそこに集中せざるを得なくて。営業しなきゃいけないのでしょうけど、目の前にお客様がいると、正直、他のことは考えられないんですよね。今は少ない数で、一人で仕事をしているのもありますが、じっくりと時間をかけて丁寧にやっていくようにしています。
家を作るのって、初めてお問い合わせ頂いた時から、何だかんだで2年近くお客様と関わっているんですよね。
なので、わざわざ興味を持って面談までいらした方とは、袖触れ合うのもではないですが、とりあえず仕事の話は置いといて、家づくりのコツや、これってこういう事なんですよ、といった相談みたいなお話を丁寧にするようにしています。
みなさんそれぞれに方向性がまったく違うので難しいですが、暖かく迎え入れ自身を飾らずお話しします。ただ自分の押し売りをできるだけせず、もし気に入るならご連絡くださいって感じが多いですね。






事務所も以前の場所で問題なかったのですが、妻の体が仕事(カフェ経営)をするのにだんだんきつくなってきたので、お店の運営と改装を考えようとなりました。じゃあお店の設計と一緒に、自分の事務所のスペースも取れるので移転してしまおうと考えました。たまたま、ここの工事が始まったのと同じタイミングで、お客様からお問い合わせ頂いたり、止まっていた仕事が動き出したりと、バタバタとしてなかなか落ち着いていないのが現状です。








近年、コスト重視になっていますが?


時々ですが、あるサイト経由で、冷やかしではないですが、低コストだけを意識した依頼などのお問い合わせがあります。でも価格って相応の価値があると思うんですよね。
僕の建築家として考えるデザインって、いろんな機能のバランスをとる事だと思っています。ただ単に変わった形を作るのではありません。家は当然使われていくものですから、使い勝手が便利で、その場所に身を置いた時に、どういう風に見えるのが心地良いか、ということをデザインしていくものだと思います。それと普段は見えないところでも、どれだけキチッと丁寧に対応しておくかだと思います。そういった気遣いのある設計が、最終的には飽きのこないものになったり、長持ちしたり、メンテナンス費用が掛からなかったりしますので、そういったことは徹底的にやります。
短期的には、こだわればこだわるほど当然費用が高くなりますが、ただ長期的にみればどうでしょうか。最近は、比較的安価で家を購入しても、10年後20年後のメンテナンス費用が莫大になってしまうことがあります。最初にしっかり作っておけば、後々の費用も抑えられる場合もあります。どっちが安いかは考え方によると思いますね。人生である意味、最も大きい買い物をする訳ですから、お金の掛け方も掛けるところはしっかり掛けた方が、後々の人生も豊かになっていくのではないのでしょうか。





施工において気を付けていることは?


とにかく図面を早く出すことですね。特に自分のせいで、現場の職人さんたちの手を止めないようにしています。少し工期が延びたからといって、すぐに費用が増加するということはあまりないのですが、見えないところで負担が増すというのは気分も悪いし、現場の仕事に悪影響を及ぼすと思います。こちらが現場に言いたいことを言わなければならないのに、「だってあなたが遅いからでしょ?」と返されないためにも、きちんと作って頂くためにも、しっかりと図面を出すことです。





近年、人手不足の影響で、スケジュールが段々と読めなくなってきています。他の仕事に影響が出ないようにしていますが、なかなか調整が大変です。工期がどんどん押したりして。
建物のクオリティーに影響しないように、細心の注意を払っています。一方で、現場判断で勝手にやってしまう工務店とはお付き合い致しません。また図面をちゃんと見ない工務店じゃなく、普段から設計事務所の仕事をしっかりやっている上で、さらに木をちゃんと加工できる工務店とお仕事しています。





とても自然を活かしたお仕事をしていますよね。


電球一つ取っても違うんですよね。例えばLED電球が悪いとは言いませんし、便利なところも沢山あります。一度、統計的と言うか実験をしてみたんですが、飲み会を開いた時、白熱電球とLED電球ですと滞在時間がまるで違うんですよ!LEDの方が圧倒的に早く帰る(笑)。自分の統計では100%間違いないです。落ち着かないんでしょうね。ただ白熱球を使うと、近年の省エネ関連の審査には残念ながら通らない。仕事をしていても、模型造りなど細かい作業する際は、LEDより蛍光灯が見やすいですね。使い分けが大切ですね。
それと近年、気密性が高い住宅が多いですが、そこに風の流れを考えていない場合が多いです。結構、皆さん、ハメ殺しの窓をガンガン入れているのを見ます。確かに見栄えは良いですよ。それこそ写真なんか撮ったら「どうだ!」ってなります。でもそこに住むのだったら、アルミの框が付いてしまい多少野暮ったいかも知れませんが、窓が開くようにします。そうするととても心地が良いんですよ。位置関係も、しっかり風が抜けるように考えてあげれば、全然違ってくるんですよね。








ご自身のウリは?


多くの建物を経験したということですね。事業規模でいえば、工事費200億円のビルから、勉強部屋みたいな小さいものまで経験しています。そういう意味では、引き出しは多いと思います。それと可能な限り自然素材を使った作りをします。環境に良い、住み心地の良い飽きのこない、地域に合った、合理性のあるデザインをします。壁紙一つ取っても、一般によく使われるビニールクロスは劣化が早く、静電気があるのでホコリを呼びやすい。やはり壁や天井がビニールだと居心地が良くないので、可能な限り和紙などを使用したりして、住環境も含めた、自然な住み心地をお届けできるようにしております。







八代 国彦
一級建築士事務所やしろ設計室 代表
住所:〒144-0052
   東京都大田区蒲田5-43-7 ロイヤルハイツ蒲田207   (お茶とお菓子まやんち内)
TEL:03-6715-7881

詳しいプロフィール
【編集後記】

自然派な八代さんの事務所があるのは、蒲田にあるカフェ「まやんち」内の一室。紅茶と一緒にお出しして頂いたマカロンの美味いこと!正直、マカロンなんて洋風モナカの域を出ないものだと思っていましたが、認識が変わりました。僕の知る限りNo.1です。
ご夫婦でこよなく自然なものを愛する姿勢は、なんだか羨ましくもあります。作る家が落ち着いた雰囲気になるのがわかる気がしました。

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