木戸 扶紀子 インタビュー

家族の形や年齢と共に変わる暮らしに応じて、手を加えながら、長く愛着をもって暮らすことができる家づくりをめざします。

Unico design 一級建築士事務所 代表 木戸 扶紀子

どんな経歴を積んでこられましたか?


日本女子大の家政学部住居学科を卒業した後、大成建設に就職しました。建築を通じて、街を作る仕事をしたいと思っていましたが、所属した部署は都市開発や不動産といった方向性で、理想とはやや違っていました。やはり設計をやりたいと思っていた頃、色々きっかけがあったこともあり、イタリアへ行くことを考え始め、ベネチア建築大学へ1年の単科コースで留学しました。
この大学は主に、修復を教えるところなんですが、そういった伝統的なことを1年ほど学び、その後、現地の設計事務所で働いて実施経験をしました。
日本に帰ってきてからは、アトリエで学びたいと、岡田哲史さんの事務所で住宅の現場を1軒担当しました。2年ほど在籍した後、マンションをメインに設計している事務所に入りました。
そのときに古くからの友人から住宅のオファーをきっかけに、フリーで活動を始めました。いわゆる修行期間というのは、3〜4年くらいですね。個人住宅と集合住宅、現場に足繁く通い、徹底的に現場監理を学びました。






最初に手掛けた仕事は、同級生の住宅でした。
住宅メーカーを散々回ってみても、どうしても物足らないとのことで相談を受けました。それでも「建築士に頼むと高いよね」と、設計料が高いという話はいつもついてまわりますが、暮らし方は人それぞれ、その暮らしをカスタマイズできるということは、先々の満足度につながると思います。住宅メーカーでは、当初の見積もりからオプションでコスト増にもなることもあるようですし、その時も価格は多少高かったのかもしれませんが、内容は遥かに良くなって気に入って頂きました。
その設計をきっかけに、ウニコデザインとして活動をはじめました。最初に手掛けたのが鉄骨造、次に鉄筋コンクリート造。その後は木造が多いですが、木造は難しいです。木造の現場でいろいろなことを学ぶことができました。
それからは趣味で活動していた、ドラゴンボートを通じた知り合いから依頼されたり、コーポラティブハウスの住居の自由設計に関わったりもしました。

自身の設計活動とは別に、NPO活動にも参加しています。もともとは、里山の保全というところから始まりました。活動をしていくにしたがって関わる人も増え、活動も多岐に渡るようになりました。現在は地元の方達と一緒に、廃校を活用する計画をしたり、マルシェを開いたり、直近では、台風被害を支援するための活動や、農業ボランティアなども行なっています。

今後は、空き家の問題も出てくるでしょうし、相続対策なども含めて、新たな価値を生み出す場所を作っていきたいと考えています。





作風はどういったもの?


作風はそんなにないと思います。特に住宅は、お客様の希望を叶えるお手伝いという部分が大きいので、それぞれの住まい手の個性が体現できたらと思います。
学生時代の教授に教えられたことなのですが、建築は建物があれば成立しますが、住居というのは人がいて初めて成立するもの。住む人の思いを整理していく作業でもあると思っています。
小さくても、暮らし方を整理したり、本当に必要なものは何かを導き出していければと思います。そういった意味では、自分の作風はないのかなと。設計する上で気にしていることは、光や風などを、密集した都心の立地でも、機械・設備に頼らず、自然な形で取り込めるように心掛けています。






集合住宅では、コンセプトをしっかりオーナー様と共に考えます。その町に自然に溶け込めるように、コミュニティを形成できるコンセプトづくりを考えます。それと収益性をどう確保するかを一緒に考えます。
例えば、1階に店舗を構えたり、そこにどういった業態の店舗を入れていくか。また上の階は、どのようなコンセプトで入居者を集めていくか。こういったことを不動産会社と共に進めていく場合もありますが、直接オーナーさんと進めていく場合もあります。








初めてのお客様に対しての接し方は?


まずはお客様の話を聞くことに徹して、本音を話してもらえるような話題を投げかけていきます。自分自身も本音をさらけ出すこともしながら。
家づくりという作業は、外では見せないようなプライベートな部分に踏み込んでいかないといけない時があります。例えば、お金のことや家族関係のことなど、色々な話が出てきます。昔は躊躇したりもしていましたが、適度な距離感を見つけることを心がけています。

今の住環境の良いところ悪いところなど、ライフサイクルのようなものもしっかりヒアリングして、設計に活かします。








今後の展望は?


自然の力を活用しながら、環境に配慮した家づくりを目指したいです。とはいえ依然コストの問題も大きく、断熱ひとつでも、トリプルガラスの方が良いに決まっていますが、とにかく高いです。普及することで価格帯が下がることにも期待しつつ、コスト面で諦めることなく、環境まで考えた家づくりを進めていけたらと考えています。
例えば千葉にしても、これだけ台風が来てしまうと、従来の作り方から、変わりゆく地球環境や天候に合わせた作り方にシフトしていく必要があります。
コストと機能のバランスのとれた提案をすべく、自分自身も日々勉強です。お客様それぞれの住まい方やデザインに加えて、環境についての意識も共有できる家づくりをしていきたいですね。







木戸 扶紀子
Unico design 一級建築士事務所 代表
住所:〒151-0064
   東京都渋谷区上原-17-3 アピカ代々木上原403
TEL:03-5454-2102

詳しいプロフィール
【編集後記】

自然なことやそんな活動が大好きな木戸さん。わりとサバサバとして飾らず、本音で話し合えるのでいろんなことを話せました。いま手掛けているPJなどのお話も聞けたりも。女性ならではの悩みやそんな相談も聞いてくださるような気がします。家を作るのって「一世一代の大決心」かもしれませんが、そんな気負いを感じさせない明るさがありました。

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