伝統建築の美しさを継承する建築を目指しています
株式会社西本組 西本建築事務所 西本 成志
いつ設計の仕事をしょうと?
子供の頃から絵を描いたりするのが好きだったので、高校生の頃から設計の世界に行こうと決めていました。大学3年生の頃にはアルバイトで事務所に入って携わっていました。大学卒業と共にその事務所に卒業制作を持って行き就職させてくださいと直談判してそのまま就職しました。そこには11年に渡り在籍していました。その事務所では古民家の再生も行なっていたのですが、図書館や集合住宅、住宅、リフォームなども担当させてもらいました。2013年に独立し、2018年に奈良の実家の土木建設業を継ぐことになり、現在は東京都奈良を行ったり来たりしています。
独立当初の仕事は?
以前設計事務所の時にお世話になった工務店さんに独立の報告をしましたら、「ちょうど古民家の相談が4件ほど来ている。仕事になるか分からないけど一緒に提案しないか」とお話を頂きまして。運良く全てがまとまり最初の仕事としてスタートしました。古民家の再生は、設計だけでも1年近く掛かったり、浩二の方も1年くらい掛かるので、しばらくはその仕事を続けていました。
古民家に特化している?
いいえ、確かに古民家は得意ですし数もこなさせて頂いてはいますが、住宅はもちろん公共の建物も多く携わっています。ですのでジャンル問わず対応可能です。
古民家の再生とは?
移築再生と現地再生がありますが、現地再生はリフォームに近いのですが、使用する素材はできる限り現地のものを使います。痛んでしまった部分は仕方なく交換しますが、材木一つとっても断面の大きなものや構造的にも歴史や希少価値が高いものが多いので、極力そのままのものを利用しながら再生させていきます。移築再生の場合は、一度解体しますので、壊さないようにしたり、できるだけ使用したい部分が多いので運搬が大変です。
古い木材を調達するのは大変では?
確かに簡単に入る材料ではありませんね。大きな柱や梁といった部分に使用する材料は特に。近年では国産のものを調達するのは困難で、海外産を活用しています。ただそれほど困った事はありませんね。
どうしても壊したりする場合の対応は?
使用できる部材は極力保存や流用する方向で考えています。店舗に再利用したり、和風建築に組み込んだり。
古民家の再利用の現況は?
ようやく最近ですね。地方の自治体もようやく重い腰を上げ始めてきましたね。
維持費の関係もありますから難しかったのでしょう。ようやく古民家の持つ価値に気が付き始めて、図書館に再利用したりと動き始めていますね。一般のお客様から古民家を再利用したいという相談もありますね。そういった場合は、利用するコンセプトに合わせての提案を致しますね。類似施設を一緒に回ったりしながら、コンセプトを一緒に固めていきます。例えば、地方の旅館を改装する場合なども、単に和モダンにするのではなく、古材を再利用する事で重厚感や本物感がぐっと増す、そんな提案も考えています。
自身の作るデザインの特徴とは?
あまり意匠にこだわった、流行り廃りのないものを心掛けています。というのも建物の寿命をもう少し伸ばしたいと思っています。今ですとだいたい30年程度と言われている建物を、エネルギーや経済的な面からも考えても100年くらいは使って欲しいですね。その建物で流行りのデザインをやってしまうと‘次の世代の方が「昔こんなの流行ったよね。」となり兼ねません。そうなるとその建物を残そうという気が無くなってしまうかも知れません。なので伝統的なデザインを踏襲しつつ住みやすさと未来に繋げられる美しい建築デザインを作りたいと思っています。これから住まわれる方には、例えば、ステンドグラスを取り入れたいといった希望がある場合には、取り外し可能な仕様にしたりして、快適性や嗜好を満足させる方法を考えます。一方で大枠では、柱や梁周辺は飽きのこないデザインを採用して両立を図ります。
間取りを考えるときも、10年後子供ができた時はこうなるので、ここはこういう風にしませんか?といった提案もします。
お客様にとっても価値ある建物になる?
そうですね。建物の寿命もそうですが、多少の改装をしても建物の資産価値は落ちにくのではないでしょうか。例えば次の世代が受け継がなくても、他の誰かにお貸しするといったことも十分考えられるので、経済的には十分回っていくのではと思います。一般の住宅では30年後には賃貸としてお貸しするのは難しいですから。
お客様に信頼をして頂くための努力は?
提案書をとにかく大事にします。提案書を出す時点までにかなり突っ込んだお話もさせて頂くのですが、お客様の言葉にできない要望まで踏み込んでできる限りの提案をします。そこである程度こちら側の姿勢というのがわかるのではないでしょうか。お互いがそこからもう一歩踏み込めるのかが決まってきます。
よくご夫婦で意見が違う場合があると思うのですが?
そういった場合はお互いのバランスを見てできる限り両立させていきます。ただよくあるのがキッチンの設計をする場合に奥様がご要望を出されなかったたりする場合ですね。確かに図面等を見てもわからないことが多いと思うのですが。その場合は、通常の仕様でいけるのか、またはカスタマイズしていかなければならないのかとうところで悩みますね。
今までで変わった設計経験は?
猟をされる方のご自宅を設計した経験があります。鉄砲を使いますので鍵付きの収納庫と、別々にしまわなければいけない銃弾の保管庫を作りました。主に鳥を仕留めているのですが、捌く場所を別に用意するかと思いきや、奥様が台所で捌くということですので、特別なことはしませんでした。とても手慣れた様子で捌いていて驚きましたね。古民家再生ですと割と農家の方など自然と共に暮らしている方が多いので、土間は広くとったりと一般的な住宅とは少し違った要望がありますね。
移築再生などの時は庭も設計されるのですか?
そうですね。庭師さんなどのご協力を得ながら作り上げていきます。近年、日本庭園の需要も少なくなっているので、現場の職人さんが少なくなってきているのが心配ですね。お寺さんなども檀家さんがどんどん減ってきて建物や庭の維持手入れが困難になってきています。何か良い方法があれば良いのですが。
奈良のお仕事との両立はどうされていますか?
互いに近いようで違う仕事ですが、奈良にはスタッフもいますし、設計の仕事はお客様との打ち合わせや現場での監理以外はどこでもできますから問題ないですね。
現場の監理はどうされていますか?
大前提としてミスを防ぐようにできるだけ細かく図面を書いて、指示を入れておきます。それとできるだけ現場でチェックしています。可能ならば施主さんと一緒に現場に入ったりしたりします。
近年リノベーションが流行っていますが?
そうですね、古い建物を再利用して再生させるのは、コスト的に見ても良いことだと思います。耐震構造を計算しながら建て替えをしても新築するより安価になる場合が十分考えられると思います。間取りも変えていけば十分要望にお応えすることが可能です。
これからは原点回帰と言いますか、ただ単にできあがった家を買うのではなく、家を建てるという感覚を取り戻して欲しいですよね。家を建てて近隣とのコミュニティーを互いに形成して良い暮らしを作っていける方向になれば良いですね。
これからは?
未来に残せる住まいを残していきたいですね。お客様の満足は当然ですが資産価値的な部分もそうですが、建築物としての価値がありお客様が残したいと思えるものを作りたいですね。
古民家を主軸にされている設計デザイナーさんです。非常に真面目な印象と、古いものを大事にしようと垣間見える姿勢が印象的でした。雑誌を見ながら、日本建築の工法などについても教えて頂きました。気を大切にし、何百年と保つ技術の奥深さに感心しきりでした。
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