中尾英己建築設計事務所の中尾英己さんが手がけた
生田の家
圧倒的な存在感のリビングダイニング
中尾英己建築設計事務所の中尾英己さんが設計・監理した生田の家が完成しオープンハウスが開催されましたので伺わせて頂きました。
駅からしばらく歩いた坂道の途中に現れた住宅は、グレーの外壁が目を惹き落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
玄関ではオープンハウスの受付がされています。施工会社との同時開催ということもあり、コロナ禍で密にならない様に気をつけながらたくさんの来場者がいらしています。この日は20組ぐらいの来場があった様です。
。
中尾さんが接客中とのことで、スタッフの重盛さんに案内して頂き、さっそく中に入らせてもらいます。
まず目を奪われたのが、圧倒的な存在感の1mの幅があるダイニングテーブルと一体になったキッチンです。ステンレスで覆われて作業効率が非常に良さそうです。
リビングダイニングの床材は、奥様がこだわられたミャンマーチークを使用しています。もちろんキッチンの面材や建具も同じで、経年変化考慮した色使いのチークを使用しています。床下にはガス温水の床暖房が施されており、非常に贅沢な空間になっています。
ライトコートを中心に考えられた家
(中尾さん)
最初に土地を確認した際、家の2面を道路に挟まれ、さらに約1mの高低差があることが分かりました。この高低差を吸収しつつ、隣接する住宅の影に隠れて暗い家にならない様にする必要がありました。
家の中心にライトコートを設け、さらにその周りに各部屋を螺旋状に配置することで、各部屋が明るくなり空気が循環することができます。またリビングを吹き抜けにすることで各部屋からのコミュニケーションも容易に取ることができ、子供達が必ず顔を合わせて自分たちの部屋に行くことも可能になります。
もともとキッチンをダイニングと一緒にしたいというご要望があったのですが、キッチンの高さとダイニングテーブルの高さは本来15cm程度の差があります。天板を同じ高さにし、床に段差をつけることで高低差を吸収し、さらに目線の高さも近くなります。
リビングダイニングは5mの吹き抜けになっており、2階とのコミュニケーションも取ることができます。上部に窓も設置されているため採光はもちろん風も取り込めます。
(重盛さん)
全体的なこだわりとしては、扉や窓に枠の境目がなくスムーズに繋がっていることです。ほんの少しのことですが、こういったところでストレスを感じない様にしています。壁面は一見塗装に見えますが壁紙を使用しています。入り組んだところの作業に職人さんが大変だといっていましたね。
主寝室にはザイザル麻のラグを敷いてあり、奥には奥様用のウォークインクローゼットがあります。またリビング側に小窓が設けられ、すぐに様子を確認することができます。
こちらは子供部屋です。まだ3人のお子さんが小さいので部屋を完全に分けるのではなく、子どもの成長に合わせて自由に3方からの扉自体で間仕切ることができる様にしました。
窓からは吹き抜けの上部に繋がっており、家族とのコミュニケーションが取りやすくなっています。
一見、ライトコートのスペース確保で収納が少なくなる様な印象を持ってしまいがちですが、道路レベル差を生かした断面計画を上手く利用した、ハシゴ付きのファミリークローゼットがあり収納力は抜群です。普段使わないものはハシゴで上部収納に、洋服などはこちらに収めておくことができます。
浴室はオーバーヘッドシャワーシステムを採用し、快適なバスライフが過ごせる様になっています。
玄関とは反対側の勝手口は、使い勝手の良い動線になっており、家の裏側には車2台分の駐車スペースがあります。
ライフスタイルを反映した理想の形
もともとは別の設計があったようです。ただ、お施主様の理想とはどうしても合致しないということで私共に依頼されました。
ご夫婦が共働きで、忙しい日々の時間を効率的に使うという視点や、高低差のある立地条件の中でストレスなく、明るく過ごせる家づくりというのが最低条件になりました。
キッチンの一体化された大きなテーブルは、調理作業から食事へと素早く移行することでき、洗い物も大容量のミーレの食洗機に入れてしまえば完了です。
またリビングから声をかけるだけで、簡単に子ども部屋ともコミュニケーションが取れるように家庭環境にも配慮しています。
ライトコートを中心にぐるっと螺旋状に各部屋を配置しましたが、明るさの確保はもちろんですが、空気の循環も考慮しています。玄関の上を見て頂けると分かりますが、子ども部屋に上がる階段の蹴込み部分を抜いて空間をつなげています。
私たちの提案も、スムーズにご理解頂け信頼して頂けました。最初のコミュニケーションが良かったのでしょうね。家づくりは奥様が主導して頂きながら進め、1年弱の設計の期間を過ごしました。ご要望された家族とのコミュニケーションなどを考慮していくと、単に部屋を配置したという感覚ではなく全体として一軒の家を作っているという感覚でした。お施主様も予算云々より、納得した家づくりを優先するといった姿勢で臨まれて、私たちもそれに共感して作ることができました。
施工は過去に2度ほど依頼したことのある株式会社タツミプランニングに依頼することになりました。相見積もりも取りましたが、結果的には良い選択でした。深基礎が必要となり土工事に時間を要しましたが、1年ほどかかった工事期間もある程度満足のいく仕上がりになりました。
メンテナンス面も考慮し、外壁はニチハのマイクロガード機能が優秀なサイディングを採用しました。費用が通常の120%程度かかりますが、耐用年数が15年と長いため結果的にコストダウンになります。
工事規模 | 敷地面積:182.22㎡ / 建築面積:90.43㎡ / 延床面積:158.35㎡ |
---|---|
構造 | 木造在来工法・地上2階建て |
竣工時期 | 2021年3月 |
予算 | 6,000万円台 |
施工会社 | タカマツビルド(旧:株式会社タツミプランニング) |
用途 | 戸建て住宅 |
設計デザイナー | 中尾英己・重盛智彦 |
天気の良い日に伺わせて頂いたオープンハウス。この日の盛況ぶりは、中尾さんの人気はもちろん、柔らかい人柄が影響しているのだろうと思いました。中尾さんの特徴は確実な施工監理に裏付けされた技術力と、柔軟な思考によるデザイン性と思います。伺った住宅はその才能を十分に発揮されたことが分かります。だから、わりと意地悪してアラ探ししてもなかなか見つからないのです。
この記事へのコメントはありません。