配筋検査 / G邸

アトリエ 137の鈴木宏幸さんが手がける

配筋検査 / G邸

アトリエ137の鈴木 宏幸さんが手がけるG邸の配筋検査に伺わせて頂きました。今回は配筋検査のポイントはもちろんですが、税金やローンなどの関係性も伺いました。


配筋で気をつけることは?



(鈴木さん)
基本的なところでは、基礎コンクリートの厚みがしっかり確保できているかを確認します。地面に石を置いてその上に鉄筋が乗っていますよね。これは地面から鉄筋までの距離を取り、かぶり厚を確保しています。型枠もそうですが、基礎の外側から内部鉄筋までの距離を確保しています。当然薄すぎてはいけません。継手という鉄筋をつないでいる箇所は、状況によって色々ありますが、鉄筋がどうしが重なる部分が40Dという単位の長さを確保しなければいけないという一つの基準があります。鉄筋の太さやコンクリートの強度などの関係で様々な方法があります。



地面から見た様子








配筋のピッチは基本的に150mm間隔になっています。これは基礎にかかる荷重によって決まってきます。ただ単にたくさんの鉄筋を入れれば良いというものでもありません。太い鉄筋をたくさん入れれば確かに強くはなりますが、そこまでの強度は必要でない場合もありますし、またコストもそれに比例して増えていきます。建物によってそれぞれ適正な強度というものがあります。








鉄筋どうしが重なり合っている部分も、鉄筋がまっすぐ揃っていた方が綺麗に見えますが、実はバラバラに離れていた方が良いんです。その方がコンクリートがしっかり隅々まで回ってくれます。重なっているとその部分にコンクリートが行き渡らない可能性があります。
その他に開口補強といって、開口部の両サイドに鉄筋を斜めに入れます。そういったところが配筋の基本的な確認事項ですね。















施工に関して




(鈴木さん)
基本的にはRC造などの大きな建物の開口部は必ず補強します。その理由は、サッシなどを設置する際に穴を開けて取り付けるからです。補強をしないで穴を開けると、ヒビや割れが生じやすくなり漏水の原因にもなります。 大きな建築現場の場合ですと、さらにメッシュ(網目状のスチール)を入れて補強することもあります。

またコンクリートを打っている最中に、水が侵入しないようにしないければいけません。余計な水が入ると強度に悪い影響が出ることもあります。また打っている最中もコンクリート中の砂利などが均一になるようにしなければなりません。そうしないとムラができ、水分が上がってきてひび割れの原因になる場合や、隅々までコンクリートが行き渡らず、気泡やジャンカと呼ばれる隙間だらけの状態で固まってしまうこともあります。一般的にはこれらをバイブレーターなどの機械を使って均一にしていきます。近年は、そういった技術力も向上していて、余程のことがない限り綺麗に仕上げてくれます。

また基礎と柱を固定するアンカーが、しっかりと決められた位置にセットしてあるか確認することも大事ですね。 昔は「田植え」といって、コンクリートの打設後に直にアンカーを刺していく方法がとられることもありました。その方法ですと正しい位置に挿していなかったり、斜めに挿してしまうこともありました。鉄筋自体もどの程度定着されているか分かりませんでした。現在、やはりそういった方法は時代と共に規制されています。

昔と今では基礎に対しての考え方も随分変わってきました。昔は軸組みがしっかりしていましたので、例えば、お寺さんといった昔からの建物でも、地震が起きた際には、束石からそっくりそのまま載っている建物が落ちただけと言うのもあります。考え方次第でしょうね。
現在の家は作り方も違いますし、基礎をしっかり打ち、全体を固めて強度を出すと言う考え方です。
特に戦前戦後は部材が少なく、柱自体も本数が少ない上に細く、筋交いも逆につっかえ棒になってしまい、梁と柱が離れてしまうこともありました。阪神淡路大震災で倒れた家の多くにそういった原因がありました。
今では筋交いを設置した部分には必ず金具で梁と柱部分を補強しています。




ここの部分は右側から石の壁が貼るのですが、奥からは白い壁になります。その取り合いを意匠的に石の壁部分を長めにしました。








打ったコンクリートのレベルを確認するためにレベルポインターを設置しています。


   

開口部の下の部分が空いているのは、基本的に点検できるように各部屋の下に潜れるように点検口になっています。木造の場合、シロアリなどの問題に対応するためでもあります。 一時、点検口部分を完全に塞ぐ工法も流行った時期がありましたが、やはり10年程度の時間が経つと何かしらの問題が出てきます。そういったときに点検できないなどの問題が発生してしまいましたので、今はちゃんと潜って点検できるようにするのが一般的です。
シロアリに関してはベイト工法というのがあります。餌を撒いて持って帰らせて全滅させる方法です。 今の住宅では床下が低く、潜り込んで薬剤を全体に撒いてということがやりにいくことも多いですから。Gさんの家でも床下這っていかないと移動できませんが、一応全体に動けるように配慮しています。
万が一のときは這ってでも行かなくてはなりませんし、異常を確認するだけであれば、移動カメラで床下を点検することもできるでしょう。 何より白アリに関しては薬剤に頼るだけでなく、白アリが嫌う材料、例えば土台はヒバやヒノキにするなど、そういったことを大切にしています。








防湿フィルムが破損した部分を補修しています。木造ですと基礎もありますのでそう大した影響はないかもしれません。打設後半年くらいで乾き切るのではないでしょうか。完成する頃には大丈夫ですね。 ただRCなどの建物ですと1〜2年くらいは少しずつ湿気が出ています。








鉄筋の結束時に出たゴミもしっかり拾って綺麗にします。


   





保証検査・金利優遇の関係










(鈴木さん)
今回、10年保証をしてもらうために保険会社の方に検査をしてもらいます。フラット35sをお使いになりますので、その検査も兼ねています。配筋時と上棟時の中間検査も同様です。
フラット35sの金利優遇を受けるためにはいくつか項目があります。省エネルギー性、耐震性、バリアフリー性、耐久性・可変性の4つの項目です。 今回は耐震性の項目で申請致しました。おかげで金利が少し安くなります。とはいえ、結局は工事費に跳ね返ってきますので、金銭的メリットはそう変わらないかと思います。




■【フラット35】S:金利Aプラン(新築住宅・中古住宅共通の基準)

省エネルギー性 (1)一次エネルギー消費量等級5の住宅
耐震性 (2)耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の住宅
バリアフリー性 (3)高齢者等配慮対策等級4以上の住宅(共同住宅の専用部分は等級3でも可)
耐久性・可変性 (4)長期優良住宅





構造計算する際に通常、耐震等級2〜3の耐震性能になるようにしています。ここに審査を受けるための申請書作成や審査を受ける手間が加わります。構造の解析だけなら安価で済みますが、申請書の作成と審査を受ける手間がありその費用もかかってきます。

今回の場合に限らず依頼内容として、建築に関わる費用の贈与は比較的多いですね。令和2年度は贈与の非課税枠が少なくなりましたが、そういった手続きも含めた費用とそれに伴う工事費用を、金利や税金の優遇を比較すると実はそう変わらない場合も多いです。
そういった比較はしっかり税理士や工事関係者も含めて相談した方が良いですね。



■直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合)

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
令和2年4月1日~令和3年3月31日 1,500万円 1,000万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日 1,200万円 700万円





工事規模 敷地面積:499.25㎡ / 建築面積:226.16㎡ / 延床面積:207.60㎡
構造 木造・平屋建て
竣工時期 2021年2月
予算 -万円
施工会社 栃木ハウス株式会社
用途 住居
設計デザイナー 鈴木宏幸
【編集後記】

配筋に関わる検査は一通り分かっているつもりでしたが、よくよく聞くと奥が深い。フラット35などの金利を下げるための項目をこなすために、工事費用がその分かかってしまうといった話は、豊富な経験のある鈴木さんに聞かなければ気づかなかったでしょう。そういったことも踏まえて配筋などの予算感など分かるようになればより有利に家を建てられるのでしょうね。


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