加藤 裕一 インタビュー

長く使用することができる建物を設計することを重要視し、フレキシビリィティーある建築を目指しています。

KSA一級建築士事務所 代表 加藤 裕一

建築家になるきっかけは?


もともとあんまり考えてはいなかったんですよ。多摩美術大学美術学部建築科を出たんですが、ちゃんと建築家になろうと考えたのは、イタリアに行ってからですね。イタリアで仕事をさせてもらううちに意識し始めましたね。アテもなくイタリアに行き、ミラノで3年働きました。そこでもう一度、しっかり勉強し直そうと思い、ヴェネチア建築大学に通いました。わりとそこでは良い成績を納めました。それにイタリアの設計事務所でも、そこそこ評価して頂いたので自信がつきました。イタリアでは、建築論を極めたポストモダンの旗手、アルド・ロッシの事務所で働きました。






日本に帰ってきてからも、特につてがある訳でもないので、いろいろな事務所に履歴書を送ってました。そこでたまたま一番最初に返事をくださった、最高裁判所などを設計された、岡田新一さんの事務所で採用となりました。そこでは4年在籍しましたが、一番大きなプロジェクトは、目白の学習院の中等・高等科の校舎です。3年近く掛かりましたね。次に担当したのは、拓殖大学の国際開発部の施設ですね。 その後、独立しました。 最初は、なかなか仕事も少ないので、下請け仕事をしながら過ごしていました。他には、ネットコンペに応募したりしてました。そうこうしてますと、ある住宅の一つが「完成!ドリームハウス」の第1回目の放送に取り上げられました。そこから少しずつ受注が増えていきました。あとは仲間と展覧会開いたりしていました。





今までで印象に残っている設計は?


2009年に完成した高断熱住宅で、TEPCO快適住宅コンテストで初めて賞を頂いた建築です。また、その住宅は、サスティナブル住宅賞で優秀賞も頂きました。いわゆる省エネ住宅なのですが、年間の光熱費が1万円で済むんですよ。オール電化の住宅ですが、お客様も最初はよく分からなかったみたいです。1年過ごしてみて驚かれましたね。 最近は、高断熱の「レトロモダン」の家を作りました。これもサスティナブル住宅賞を頂きました。






受賞したものは、高断熱住宅などのものがほとんどです。ちゃんとしたものを作っていますという証明です。これらは、やはり第三者が認めた実績ですので、お客様もその方が安心できますし、工務店さんも紹介しやすいでしょう。高断熱住宅や省エネ住宅については一応世間に認められたのかなと。










ご自身の設計の特徴は?


やはり高断熱・高気密住宅が得意なんですが、ただ単に省エネだけじゃなく、デザイン性もしっかりと追求した住宅だと思います。ありがちなのですが、機能性ばかり求めていって見た目が野暮ったい。それでは建築士に設計デザインを依頼する意味がありません。見た目も美しく、暮らしてみても快適で生活しやすい。そういった住宅を作っていきたいですね。 それとコスト管理もしっかりしたいです。例えば、土地はこのくらいあるけど、予算はある程度限られているといった方など、イニシャルコスト的な面はもちろん、ランニングコスト的なところでも、省エネ住宅で建てて、さらにデザイン性も追求していけて、快適な生活と経済的な余裕が生まれる可能性がある仕事がしたいですね。


お客様とのコミュニケーションで気をつけていることは?

わりと僕だけにお問い合わせをされている方が多いように思いますね。そういった方ですと、依頼される目的もわかりやすい場合が多いです。過去に依頼されたお客さんからの紹介も多いです。 お客様の予算は3000万円くらいが中心で、普通のお勤めの方が多いですから、そのくらいの家庭環境に合わせた住宅作りには理解があります。特別アッパー層の方ではなく、いわゆる一般的な方々が対象ですので、身近なお話ができ、また理解できる。自然と打ち解けていきますね。







省エネ住宅の魅力は?


やはりランニングコスト面と快適さですね。高断熱住宅で過ごす冬場は本当に快適です。暖房機器をほとんど使わないで過ごせますからね。ランニングコストも驚くほどかからない。夏場も、近年の酷暑を過度な冷房なしで過ごせます。 他のハウスメーカーさんも作られていますが、例えば、大手さんやそういった会社さんとは、コスト面でこちらの方が多少は有利かと思います。とはいえ、価格だけの勝負はしません。意味がないですから。それに設計デザイナーに依頼すれば、自分たちの暮らしに合わせた作りができます。ハウスメーカーさんもある程度はカスタマイズできますが、どうしてもすべてとはいきません。





設計デザイナーとしての役割はどう考えていますか?


すべき事を徹底していきたいですね。工務店さんの施工チェックもしっかりやらなければいけません。仕事として当然なのですが、まだまだ工務店さん自体のイメージを悪く持っていらっしゃる方も多いです。そういった方々に対しても、しっかりご納得頂けるような現場監理をしていきたいですね。 お客様の味方であり、監理契約はお客様のパートナーになって協力するという証ですから。 土地探しなどもご協力させてもらう場合もありますが、ほとんどの方が土地を相続されていたり、すでに土地を入手された方が多いので、その土地の中でいかに暮らしやすい住宅を作るかですね。世田谷辺りだと、建ぺい率が50%になってしまいますので、できるだけ土地の有効的な活用が求められます。





今後はどういった方向に?

そうですね。高断熱住宅をより積極的に進めて、リノベーションなどにも取り組んでいきたいですね。それと自分のホームページの改修もしなければいけません。やろうやろうと延び延びになってしまって・・・。 人口がどんどん減っていく中、幸いに東京はなんとかなっている状況です。厳しい環境になっていきますが、今ある暮らしを、より快適にできる設計をできればと思います。









加藤 裕一
KSA一級建築士事務所 代表
住所:〒101-0064
   東京都千代田区猿楽町2-5-2 小山ビル401
TEL:03-3408-8419

詳しいプロフィール
【編集後記】

一見すると少し暗い場所にあるのですが、こんな所にというと語弊がありますが、目立たない場所に事務所はあります。でも数多くの受賞歴や、大人しそうな(失礼!)雰囲気とは裏腹に冒険心の豊かさにびっくりします。穏やかな口調、もの静かな立ち振る舞い。でも時折見せる自信の片鱗。目立つ存在ではないですが、腕も良く誠実な仕事ぶりの方をもっと応援できればと思いを新たにした日でした。

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