中村 未希子 インタビュー

職人さんの仕事魂が宿る、木造建築の素晴らしさを感じることが出来る住まいにしたい

株式会社 降幡設計東京事務所 代表取締役 中村 未希子

建築を学ぶ経緯は?


日本女子大学家政学部住居学科を卒業後、ミサワホームに就職しました。その後、小さい事務所を経て降幡事務所に入りました。降幡はもともと松本ですが、松本に2年ほどいた後、東京の事務所に移動しました。それから約20年在籍し、数人で暖簾分けという形で独立です。もう11年が経ちました。早いものです。 大学ではインテリアの勉強をするかと思っていましたが、美術館の設計や住宅の設計の勉強をしました。卒業してただ漫然とミサワホームに行きましたが、たまたま知人に誘われ松本に行った際に出会った、降幡事務所の本格的な日本建築に触れて感銘を受け、そのまま降幡に入り日本建築を学び始めました。初めは日本建築の図面すら理解できませんでしたが、少しづつですが、仕事をしながら学んでいきました。








日本建築の良さは?


日本古来の気候風土に根差した建物ですね。湿気の多い国ですから、土壁があったり、何十年も乾燥させた地元産の木材を使ったり、設計は勿論、職人さんの現場でのアイディアが入った住宅です。一般的には住宅は、それほど長く持ちませんが、日本建築は100年200年と持ちます。日本古来の美意識と技術を組み合わせて作る良さですよね。それと先ほども申し上げましたが、昔の日本家屋と違って、今は素材や技術もある意味発展しています。断熱性能も格段に上がっていますし、耐震補強もしっかりできます。そう考えると、いまのいわゆる建売り住宅では得られない、現代のライフスタイルと日本建築の良さを備えた満足感があるはずです。但し、現代の技術は使い方次第で、寿命は長くもなり短くもなってしまうものです。






独立した当初に作った住宅が、非常に印象に残っています。 お客様がすごく多趣味の方で、桂離宮の月見台みたいなものを作ったり、暖炉にライト風の石積みを希望されたりと、印象深かったです。もともとハウスメーカーの家に住まわれていたのですが、すぐに飽きちゃったみたいで、ウチに依頼を頂きました。 それと茶室を作ったこともありました。お茶室とその先生のご自宅を新築で。そのお茶の先生は、日本の伝統様式に詳しくて、またセンスも良いんです。 その先生は背が高かったのですが、お茶室の内法(敷居の上面から鴨居の下面)はこの高さで、横幅とのバランスはこれが一番なんだとおっしゃいました。みなさん、内法を高くしてしまいがちなのですが、一言だけ「かがめば良いじゃないですか」と。ご自宅も同じ寸法で作られました。非常に美意識の高い方でした。





現場監理のコツは?


すべてを記録し残します。打ち合わせはもちろん、メモや詳細図も記録していきます。施工も、疑問点は職人さんに施工例を見てもらい、共有していきます。大工さんの仕事が悪ければ、左官屋さんの仕事も雑になってしまいます。すべての仕事のレベルが高いところで統一されるように頑張っています。 日本建築自体の仕事は少ないです。仕事がないから職人も減っていきます。例えば、いい材料を安い時に買い貯めておいて、使ってみたい建物に出会えると、惜しげも無く使ってくれる。設計図面を見ながら、図面よりもっと良いものを作りたくて、こちらの知らないことを提案してくれる職人としての矜持がある。全体を見直しながら、そういった職人さんの持てる力をすべて出してもらえるようにするのが監理のコツでしょうか。





どいう流れで依頼が来ますか?


ホームページからのご相談の依頼があることもあるのですが、基本的にはご紹介が多いですね。 過去に設計した飲食店に食べに来られたお客様が、困っているんだけどどうしたら良いかという相談があったり、過去のつながりで仕事がくる場合が多いですね。最近は地味に活動してますね。例えばハウスメーカーさんのような、車で一軒一軒周ったり、情報力のある不動産会社さんとお付き合いしたりする営業力が持てないので難しいですね。






依頼されたお客様とは、できるだけお話し頂けるように気を使っています。現場を確認しながら、家に対する思いを話して頂いています。例えば、古民家での暮らしにどれだけ愛着があるのか、これからの生活や古民家再生への不安などの思いを聞かせてもらいます。代々受け継がれてきた家だとありがちなのですが、遺産相続などの非常にデリケートな話に遭遇することもあります。そういった場合は、あまり立ち入ったことはできませんので、可能な限り家族の皆さんの幸せを最優先に考えて進めていきます。また、建物自体はほとんどできないことはないのですが、専門外の土地探しなどのことは、協力会社さんに橋渡しをしフォローをしていきます。 古民家再生に対する不安で多いのが、「古くさい」「寒そう」などの性能面や、「耐震性」などの安全性です。このあたりを勘違いされている方がまだまだ多いです。断熱材の話や耐震補強など、しっかりと説明させて頂きご理解頂いております。





今後の活動は?


理想は、自分の選んだ良い職人さんと仕事をしてみたいですね。近頃はすべて既製品ばかり氾濫していますが、一つ一つ職人の技が光る、手作りの施工ができる日本家屋を設計していきたいですね。なかなか予算もありますし、職人さんも少なくなっているので難しいですが。







中村 未希子
株式会社 降幡設計東京事務所 代表取締役
住所:〒171-0031
   東京都豊島区目白3-1-36-106
TEL:03-6908-2981

詳しいプロフィール
【編集後記】

目白駅から5分ほどで着く事務所。古い資料を見せて頂いたりしながら、日本建築の奥深さにちょっとびっくり。頭では分かっていても、実際目にしてお話を聞くと全然違います。アナログ的な要素も多い日本建築が、今は色々な技術と組み合わせて発展しているそうです。やっぱり現場を大切にして学んでいかないといけませんね。

関連記事

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP