東京都墨田区
まわりをビルに囲まれた、東京の両国に建つ寺院である。今回の計画では念仏堂、客殿、僧院という3つの建物機能が求められた。広大な寺所があれば、それぞれの堂宇を点在させて回廊でつなぐことにより、伽藍を形成するのであるが、都会の限られた敷地では、境内空地を確保することも重要となってくるため、3つの建物機能を縦に積み重ねることとした。ただし積み重ねた建物機能はそれぞれ独立したものであるため、伽藍形式は踏襲し、建物内部をつなぐことはせず、外周の回廊で各部を巡るようにしている。
地上レベルは境内空地とし、上空の回廊沿いに参道から連続する竹を植えることとした。この天空の竹林の中には、108個のスワロフスキーが連なった数珠柱を点在させている。これは極楽浄土の道すがらにある七宝樹林の見立てであり、プリズムが発する七色の光は、数珠を繰りながら念仏を唱えることによって往生を約束された極楽の世界を垣間見るようである。
建物の中から回廊越しに眺める竹林は、ここが東京都心のビルの谷間であることを忘れさせてくれる。
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