東京都
建物に残された棟札・幣串・普請帳から昭和3年に建設されたことが確認できる。米を保存する蔵の機能と、農機具の保管・農作業を行う納屋の機能を併せ持つ建造物であった。平成29年に住居として改修された。
構造規模は木造2階建て、梁間4.5間・桁行6間、切妻瓦葺屋根である。建設当初から鉄筋コンクリートの布基礎であった。
改修後の間取りは、南側の建設当初出入口であったと推察される場所を玄関とし、保管されていた大戸を玄関戸として再利用している。玄関を入ると三和土(たたき)仕上の玄関土間と、来客の応対をする三畳の小上がりとなっており、上部には吹抜けがある。吹抜けからは2段に組み上げられた見事な梁組を見ることができる。小上がり部分に残された腰壁は既存の板張りを状態良く保存している。
玄関土間の正面は6枚の大阪障子を隔てて、居間兼食事室となっており、ここでは根太天井が保存されている。内部の木製建具については、玄関の大戸以外は既存のものではないが、古い建具を調達・修繕し、再利用しているため、歴史ある空間に違和感なく馴染んでいる。居間兼食事室の西側は広縁となっており、部屋境の4本の障子を引き込むと2間の大開口が広がり、敷地内の屋敷林を望むことができる。ここでは戦時中に黒く墨で塗られた漆喰仕上げの外壁土壁が保存されている。
下屋部分北側には台所・納戸・食品庫、東側には浴室・洗面所・便所が並んでいる。納戸の床の一部が強化ガラスとなっており、ここから保存された建設当初の基礎の一部を見ることができる。また、台所と食品庫の間にある壁は、米を保管していたコンクリートの壁が保存されている。
居間兼食事室にある階段を上ると2階は10畳の寝室と便所となっている。2階の外壁面内壁は、解体時に化粧合板の下から出てきた建設当初の板壁をそのまま保存した。欠損部は丁寧な補修が施された。寝室の南北は吹抜けとなっており、障子で間仕切られている。吹抜け面に設置された手摺には、米の保管で使用されていた落し板が再利用されている。天井は既存の2段組みの梁が現しとなっており、建設当初の様子を伺うことができる。
この記事へのコメントはありません。